神様、僕に妹を下さい

Act.238 サイド晶(あきら)

 皇兄が会長さんに、私の事を宜しくお願いしますと頭を下げた

 『晶は大事な妹だから』・・と

 皇兄にとって、私は大事な妹

 「ももを見てると、わかるわ。こーちゃんがいかに、大事にしとったか」

 会長の言葉に、私は静かに頷いた

 「雨風にあたらんように、ずっと側で守っとったんやな」

 そう、何かあった時、本当に困った時、助けてくれたのは皇兄だった

 「うち、お父さんがずっと単身赴任で、男手は皇兄だけなんです。だから問題が起こると、どうしても頼り切るところがあって、だから・・いつも迷惑ばかりかけてしまって」

 「あきら」

 石垣によりかった私の頭上の壁に、会長さんは右肘をかけた

 「会長さん・・?」
 いま、晶って・・?

 軽く首をかしげる私の頬に、会長さんの左手がゆっくり添えられる

 「あの・・」
 
 「しぃ。黙って」

 ほんの少し顔を上にあげた私の唇に、会長さんの唇が重なった
 
 「ん・・・・・・・っ」
 上下の唇が同時についばまれ、角度を変えられながらその行為は続いた

 皇兄と違う唇、違うキスの仕方

 「ぁ・・・・・」

 会長さんの舌が私の唇に挿入してきた時、私の手から離れたポーチが地面に落ちて中身がバラバラになった
 
 そのせいでか、最後に「チュッ」と大きな音を立てて、会長さんの唇が私から離れた

 「・・・」
 私は何て言えばいいのか分からず、たったいまキスされた唇に指を当て、うつむいた

 「やっと、誰にも邪魔されず、キス出来た」
 会長さんは、うつむく私の首の後ろに腕を伸ばし、自分の胸に引き寄せた

 「晶、キス初めてやったんに、つい調子に乗って無理強いしてしもた。ビックリしたろ?」

 「は・・い。少しだけ」
 抱きしめられながら、頭を撫でられる

 私・・皇兄以外の人とキスしちゃったんだ

 なんだろう・・この言い表せない複雑な気持ち

 普通なら、皇兄とキスした事自体、間違っているのに
 なのに・・会長さんとキスしてた時、私・・何を考えてた?

 「今日から、こーちゃんに代わって俺が晶を守るからな。あーあ、ポーチの中身がぐしゃぐしゃや」

 会長さんは私が落としたポーチの中身を拾い始めた

 「なんやこれ?おぉ、可愛ええなぁ」

 そう言って、会長さんが目を輝かせ見ていたのは、あの水色のパスケースだった
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