神様、僕に妹を下さい

Act.240 サイド晶(あきら)

  両目から落ちる涙は、2本の線を描き頬を伝り、顎の先で交わると地面へと落ちていった

 「どうしたんや?何か悪い事言ったか?」

 私の涙にオロオロする会長の側を、ふらふらと離れて行った

 皇兄・・

 皇兄・・どこ・・?  何処にいったの?

 「こぅにぃ・・ケホ、ケホ」

 薬で抑えられていたはずの、乾いた咳が出始めた
 喉が、痛い

 すみれの花言葉 『ひそかな幸せ・ささやかな愛』

 どうして、私の写真の下にすみれの花を入れていたの?

 どうして、私に花言葉を聞いたの?

 皇兄の真実(ほんと)の気持ちを聞きたい

 「あっ!」

 黒シャツを着た男の人を追いかけようとした時、後ろから腕を掴まれた

 「勝手に離れたら、あかんやろ」

 私の涙がハンカチで拭われ、私の手の甲にペタッと会長のプリクラが貼られた

 「俺、自分のもんには、プリクラを貼るんや。はずかしいからいつもは見えんとこに貼るけど、晶には見えるとこにいっぱい貼りたい」

 ペタ・ペタと私の手の甲がプリクラでうまっていく

 「クスクス。そこに貼っても手を洗ったら、取れちゃいますよ」

 「あっ!せやな。どーしよ」
 会長はコリコリと頭をかいた

 「クス」

 「よかった・・晶、笑ってくれた。もしかしてキスした事に、泣かれたんやないかって心配した」

 「すみません・・なんかつい、感情が緩んじゃって」

 そうだ。私は今、会長さんと一緒にいる
 私の事を心配してくれる人がいる

 「私、お祭り見たいです。一緒に歩いてくれますか?」

 「当たり前やろ。行こか」

 会長さんの左手が差し出され、私は右手を重ねた

 黒シャツの男の人の姿はもうなかった
 皇兄かどうかも分からない人を追おうとしていたなんて、私はバカだ


 「あっ、ガラス細工」

 ガラス細工の屋台を見つけて、駆け出そうとする私の手を、会長さんはしっかり握っていた

 「う・・痛いです」
 顔を歪める私に、会長さんは急いで手を緩めた

 「すまん・・。また、勝手に何処かに行ってしまうんやないかと思て・・」
 
 「やだ、何処にも行かないですよ。でも・・」

 「でも・・なんや?」

 「ガラス細工は見てきていいですか?」

 「よし、今日の記念に買うてやる」

 会長さんの顔に笑顔が戻った
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