神様、僕に妹を下さい

Act.247 サイド皇紀(こうき)

ガラス細工の光に誘われ、屋台の前にしゃがみ込む

  晶に導かれたのだろうか?

 「きれいですね」

 よいしょと呟き、双葉は帯を摩りながら、しゃがみ込んだ

 食べてばかりだ。腹が苦しいのだろう

 「お前、食べすぎ。たまにも、目も養え」

 「はーい」
 返事はいいが、双葉は余り興味がない様子
 
 晶だったら、大きな瞳を輝かせ、万遍の笑みを浮かべて歓んでいるはずだろうな

 「選べよ。好きなの買ってやる」

 「ホント!」
 双葉はパチンと手を叩いて、選び始めた





 『遅いっ!!』
 ガラス細工を選び始め、1時間は経過しようとしている

 いくら、晶が好きだとはいえ、もう限界だ

 ついに我慢の尾が切れて、オレは立ち上がった

 『決めれないのなら、オレが選んでやる!!』

 晶に宣言し、上からガラス細工を見渡した
 
 何がいい?どれが、晶に似合う?
 キラキラ光る中で、オレの目を引いたのは、キョロとした目を持つ薄緑色のかえると晶の瞳の色に近い黒色のおたまじゃくし

 『これだ!』
 これにしろ!!とオレは指差す

 ピクピクと晶の頬が引きつっているのがわかる

 『やだよぅ。かえるなんて。カワイイのがいい』
 両頬を膨らまし、オレを見る顔はかえるそっくり

 買うのは絶対これだ!!と決めたオレは、支払いを済ませ晶を屋台から引き離した

 そして、かえるを晶に手渡した

 『せめて、おたまじゃくしにして』

 『だめ。お前はすぐに迷子になるから、ちゃんと帰れる様にと、かえるがピッタリだ』

 『じゃぁ、皇兄は、なんでおたまじゃくしなの?』
 不服を隠し切れず、晶は尋ねた

 『オレのは、おたまじゃくしがちゃんと、かえるに孵れますようにと願ってだ』

 かえるを持つお前の元に、帰る事が出来ますように。そう、願って



 「皇紀先輩、決めました」
 
 「もうか?」
 
 双葉が選び始めて、10分と経っていない

 「はい。これと、これです」
 双葉は、金魚と貝殻のガラス細工を差し出した

 この決断力の速さ、少しは晶に見習わせてやりたい

 店主に袋に詰めてもらっている最中、台の隅に蓮の葉に乗った、かえるとおたまじゃくしを見つけた

 「これも下さい」

 渡す宛てのない、買い物をし、ポケットに入れる
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