神様、僕に妹を下さい

Act.256 サイド晶(あきら)

 「なんや・・これ・・」

 私達は神社に向かう石段の前に立っていた

 「何段あるんや・・?」
 先が見えない階段の先を見上げる
 
 「確か、80段だったかと思いますよ。止めますか?」
 
 皇兄の言葉に、会長さんは私の手をギュッと握った

 「行くで。俺らの神様や。晶もがんばれるな」

 会長さんは私の腕を取り、階段を1歩1歩登り始めた

 ズキン
 「・・・っ・・」
 さっき、踏まれた左足が階段を登る度に、痛み出していた

 でも、我慢しなくちゃ
 
 私の横には、後から追いついてきた皇兄が並んでいる

 皇兄と長く一緒にいたい
 だから、足を怪我している事を悟られたくない

 悟られたく・・

 「キャッ」
 思っている側から、石段の端に躓きバランスを崩し、前につんのめった

 「危ない!」
 間一髪、会長さんが繋いでいた私の左手を持ち上げてくれる
 だが、右側も石段に倒れそうになり、そこに皇兄の左手が伸びて、私の右手を掴んだ

 「気をつけろ」
 
 「ごめんなさい」

 私を助けてくれた後、皇兄はすぐに私の右手を放した

 数秒手を握られただけなのに、とても熱い

 繊細で長い指

 ドキン・・ドキン・・
 
 手・・さり気なく繋いだらだめかな?
 会長さんは、階段を登るのに夢中だし、右端の双葉さんには死角で見えないと思う

 だめ・・かな

 手をモジモジさせながら、皇兄の左手にそっと近付いて行った

 自分の指先で、皇兄の指先にそっと触れる

 反応はない
 たぶん、偶然触れてしまったんだと皇兄は思ったのだろう

 ドクン・・
 手の平をそっと開き、皇兄の親指以外の指を軽く握った

 私はおそる、おそる皇兄を横目で見る
 
 皇兄は少し、驚いた表情で何も言わず私を見返した

 「だ・・め・・?」
 声にならない声で尋ねる

 だめだよね
 妹となんて、私となんて、手なんて繋ぎたくないよね

 一度は握った皇兄の手を、力を緩め手を放そうとした時、皇兄の長い指が折れ曲がり、私の手を握り返した

 「!」
 驚いて見つめ返す私に、皇兄は軽く頷き、何事もなかった様に正面に向き直った

 繋がれた私達の手

 痛すぎず、ゆるすぎるわけでもなく、心地いい力の加減

 石段を登りきるまでの短い時間

 とても幸せだった
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