神様、僕に妹を下さい

Act.257 サイド晶(あきら)

ズキン・・ズキン

 石段を登るたび、針を刺されたような痛みが左足先に響く

 さっき、転びかけたせいで余計、酷くなった

 「もうすぐやな晶!」
 会長さんが、嬉しそうに私に笑いかける

 「そうですね」

 大丈夫。気付かれていない

 「双葉、お前は大丈夫か?」
 皇兄は少しだけ遅れ気味の双葉さんに声をかけた

 「わぁ、先輩心配してくれるんですか?」

 双葉さんの輝いた顔に 「建て前上な」 と皇兄は切り替えしている

 私達の手は一度も離れることなく繋がっていた

 大丈夫
 皇兄にも足の事気付かれていない

 このまま・・ずっとこうしていられればいいのに・・

 思いも虚しく、80段の石段を登りきり、私達は鳥居をくぐった

 
 そろそろ、繋いだ手を離さないと・・

 ほんの、何分間だけだったけど、皇兄に触れることが出来て、私の手を握り返してくれてうれしかった

 手・・離さなきゃ・・・皇兄また、会長さんに『妹離れしろ』って言われちゃう

 私は、指先を動かし、皇兄の指から1本1本押して離していく

 ありがとう・・・ありがとうね。皇兄

 私の最後の中指が離れていこうとした時、皇兄の親指と人差し指が私の中指を掴んだ

 「こ・・!」
 
 「神殿までいいだろ」

 私の方は見ず、目の前の神殿を真っ直ぐ見ながら皇兄は言った

 「・・ん。うん」

 ・・うれしい。皇兄がどういうつもりで、言ったのかは分からない
 でも、今、この繋いでいる事実がうれしい

 私達がゆっくりと歩く中、会長さんが先に神殿へと駆け出していた

 チャリン・チャリン
 逸早く神殿に着いた会長さんの、お賽銭を入れる音が聞こえる

 パンパンと拍手を打つ音がし、しばらくシーンと静まり返ると、カランカランと下駄を鳴らしながら会長さんが私の元にかけてきた

 「神様にお願いしてしもた」
 会長さんはニコニコ顔で、私の顎さきをつまんだ

 「早う、晶とセカンドキスが出来ますようにて。しもた!言うたら願いがかなわんようなる。今のなしや」

 
 ・・スル・・スル

 繋がれた手の平が、皇兄の方から外されていく

 皇兄は私から手を離し、ギュッと握り拳をつくった

 こ・・皇兄・・

 「そっか・・ごめん」
 
 皇兄はそう呟くと、神殿の方へと歩いて行った
< 257 / 350 >

この作品をシェア

pagetop