神様、僕に妹を下さい

Act.026 サイド晶(あきら)

うひゃー。遅くなっちゃったよー

私はひたすら音楽室に向かって走っていた

掃除当番だと言う事をすっかり忘れたのと、おまけにジャンケンで負けてゴミ捨てまでするはめになってしまって・・・

時計を見ると、もう18:00を回っている

18:30で校内の終了のチャイムが鳴るから、あと30分しかない

せっかく音楽室の中でピアノが聞くことが出来る初日なのに、私ってば何してるんだろう

「ハァ、ハァ、ハァ」

音楽室は1年の校舎から別校舎にある為、走っても5分以上はかかる

音楽室の前に着いたときは5分以上を過ぎていた

ドアに耳を澄ますが、ピアノの音は聞こえてこない

「はー。そうだよね。」

ため息をついて、背中に背負ったリュックを手に持ち替える

運動部なら延長とかも考えられるけど、文化部なら18:30前には終了してしまう部がほとんど

きっと、あの人も帰ってしまったよね

チーズケーキを渡すのに精一杯で、名前も聞いてない始末だし

帰ろう

そう決意して、立ち去ろうとした時、音楽室のドアが静かに開いた

「よかった。来てくれたんだ。もう来ないかと思った」

優しい口調であの人は私に話かけた 

今気づいたけど、この人の瞳、明るいブラウンですごくきれい

髪もブラウンで瞳と対になっている

「何か僕の顔についてる?」

「あっ、いいえ。違います。ちょっとビックリしちゃって」

私は慌てて否定した

まさか、王子様みたい・・・と考えていたなんて言えない

「さ、どうぞ」

彼は音楽室に手のひらをかざした

「いいんですか?もうすぐ終礼ですし、遅くなった私が悪いんだから・・その、あの」

しどろ、もどろになる私

でも、聴きたいなぁ

「かまわないよ。チーズケーキのお礼。さ、座って」

「は・・はいっ」

私はピアノから一番遠い、角の座席に腰掛ける

「そこの席でいいの?」

彼はクスクス笑いながら言った

「ここで、いいです。邪魔したくないから」
 
「そう。何かリクエストはある?」

「あまり詳しくないから、いつも弾いてる曲でお願いします」

彼は何も言わずにうなずくと、ゆっくりとピアノを弾き始めた

私はリュックを胸に抱え、そっと目を閉じる
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