神様、僕に妹を下さい

Act.262 サイド晶(あきら)

 皇兄は一度も立ち止まる事もなく、神殿へと歩いて行く

 『そっか・・ごめん』

 皇兄は、いったい何に謝ったの?どうして手を離したの?

 会長さんが来たら急に、皇兄の表情が翳り、目を伏せ・・て・・会長さんの・・

 『早う、晶とセカンドキスが出来ますようにて』

 キス・・!
 私が会長さんとキスした事、皇兄に知られてしまった・・!?

 「ケホ、ケホ」
 乾いた咳が出る

 「晶も早う、お参りしておいで」

 「え・・はい・・」
 会長さんの言葉に、返事をしつつ、神殿のへと・・皇兄の方へと目を配る

 チャリン・・皇兄のお賽銭を投げる音が聞こえる

 長い沈黙・・皇兄は何をお願いしているのだろう?

 とても・・長い沈黙

 「流石、80段も階段を登ると、暑いなぁ」
 パタパタと会長さんがウチワで仰ぐ

 双葉さんは、石の灯篭に寄りかかっていた

 そんな、3人の間に皇兄がお参りを済ませ、戻ってきた

 皇兄の表情からは、何も読み取れない

 「皇兄」
 思い切って、1歩踏み出してみた

 ズキンッ!
    「・・・・・っ!」  左足先の痛みが走る

 痛みで私が目を瞑る中、皇兄は私の前を素通りし、双葉さんのいる元へと歩み寄った

 皇・・兄?

 皇兄は双葉さんの前で屈み込み、双葉さんの足首に手を触れた

 「せ・・先輩!?」
 驚いた双葉さんが、身体を起こす

 「痛いんだろ。足」

 ズキンッ
 皇兄の言葉に、私の左足が疼く
 
 もちろん皇兄が尋ねたのは、双葉さん

 「大丈夫ですよ」
 皇兄の問いに、双葉さんは平気そうに答えている

 「ここまで、酷くなる前に言えなかったのか?」

 ズキン・・ズキン
 まるで、私が言われているみたい

 「だって・・先輩と一緒にいたかったから・・」
 戸惑いながら、答えている双葉さん
 
 私も、皇兄と一緒にいたくて、足の怪我を隠そうとした
 だから、双葉さんの気持ちが良くわかる


 「まったく」
 皇兄はため息をつき

 しゃがんだまま、双葉さんに背をむけた

 「辛い時は辛いって言えよ。その足じゃ、歩けないだろ。背負ってやる。ほら」

 皇兄の大きな背中に、双葉さんが乗った

 「じゃぁ、オレ達行きますので」

 その間、皇兄は私の方を1回も見る事なく、石段を降りていった
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