神様、僕に妹を下さい

Act.264 サイド晶(あきら)

会長さんと初めて会ったのは、私が双葉さんとケンカした時、双葉さんを心配して来たのが会長さんだった

 先生に怒られて困っている私をそこから救い出してくれた

 ケンカでつけた痣を、冷やしてくれたり、ひまわりの種をもらったり、
『もも』という名前を付けられて、頬ずりされたり、変わった所もあったけれど、優しくて、この人といると楽しかった

 そして、私に『恋』と気付かせてくれたのも、この人

 会長さんは、何度も私にチャンスをくれた

 自分の好きな人が誰なのか、心に聞いてみればいいと教えてくれた

 でも、私は自分の好きな相手が、皇兄だと認めたくなくて、忘れたくて、会長さんの私に対する気持ちに逃げてしまった


 一緒にいれば、きっと好きになる。そう信じて


 会長さんは、いつも真っ直ぐに私に気持ちをぶつけてくれたのに、私は今、一番酷い事を会長さんにぶつけようとしている


 「晶、どうしたんや?」

 様子がおかしい事に気付いた会長さんが、ウチワでパタパタを私を仰いだ

 「会長さん・・」

 「なんや?」

 何をどう言っても、傷つける事になる

 「わたし・・私、会長さんの事好きです」

 私は、真っ直ぐに会長さんを見た

 「な・なんや改まって。俺も晶が好きや」

 会長さんも私を、真っ直ぐ見た

 サワサワと生暖かい風が吹き、私の髪をなびかせる

 でも・・
 私は一瞬目を閉じ、息を吐くと同時に続けた

 「でも、私の中にもうひとり別の人がいて、私はその人の事を忘れる事が出来ません」

 「・・で?」

 パタパタと仰いでいた会長さんのウチワが止まる

 「私は、会長さんの気持ちに答える事が出来ません。ごめんなさい」

 ごめんなさい。ごめんなさい。心の中で何回も繰り返す

 私は、片時も会長さんから目を逸らさなかった

 逃げてはいけない

 人に気持ちを伝える時は、相手の目を見て、きちんと話す

 でないと、こんな私を好きになってくれた会長さんの気持ちに対して失礼だ

 「ふうん。そうか」
 会長さんの声色が、低く冷たい声に変わった

 「なぁ、殴ってもええか?ええよな?殴られるような事してるんやもんな」

 殴って、会長さんが気が済むのなら

 それだけの事を私はしたのだ

 「はい」 私は静かに頷いた
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