神様、僕に妹を下さい

Act.277 サイド晶(あきら)

 「えっ!!」

 私の問いに、皇兄は声をあげ、私を見るがすぐに視線を外した

 「あ・・そうだよね。私、皇兄に大嫌いって言われていたのに何を今更聞いてるんだろう」

 自分で質問して、自分で答えを出していた

 心に重く圧し掛かる。『お前なんか大嫌いだ』と言った皇兄の言葉

 神殿の・・神様の前では、皇兄が好きだとはっきり言えたのに、皇兄を目の前にすると、言葉が出てこない

 現実が突きつけられる

 「足・・ありがとう」
 立ち上がると、皇兄が固定してくれたおかげで、それほど痛くなかった

 「晶・・オレは・・」

 皇兄がゆっくりと言葉を吐いた

 「お前が生まれて15年間、本気で嫌いだと思った事はないよ」

 「ほ・・本当?」

 本当に・・本当に・・私、嫌われてないの?

 驚きと嬉しさで、鼻がツンと痛くなった

 「あぁ、本当だ」
 皇兄ははっきりと答えた

 言える

 今なら伝えられる。『私も皇兄が好き』だと

 「皇兄・・私・・皇兄の事・・」
 ドキン・・ドキン・

 「だって、お前は一緒に暮らしてきたオレの妹だろ、今更、好きも嫌いもない」

 「えっ・・」
 皇兄の事が好き・・と言う言葉が喉の奥で止まる

 「相変わらず鈍いな。どこの世の中に、血・・血の繋がった妹を本気で嫌いになる兄がいると思うか?ちょっと考えればわかるだろ」

 一緒に・・暮らしてきた、血の繋がった・・妹・・

 あと、1歩。ほんとにあと1歩だと思ったのに、私と皇兄の距離は遠くなった
 
 「そ・・そうだね。私ってバカだね」
 言って、両目から涙が溢れてきた

 苦しい・・苦しいよう

 「ほら、お前はすぐに泣く。さぁ涙拭いて、雨がやんだらここを出るからな。風邪でも引かれたらオレが母さんに怒られるだろ」
 
 兄の立場としての言葉

 「ん・・わかった。ケホ、ケホ」
 乾いた咳と、背中に悪寒が走る

 「ほら、風邪ひいたんじゃないか?熱みせてみろ」

 私の額に、皇兄の手の平が添えられる

 「少し熱があるな・・寒いか?」

 妹だから、心配されて、妹だから優しい言葉をかけられる

 「・・寒い。皇兄・・私寒い」

 「困ったな。他に何か着れる物をー」
 
 立ち上がる皇兄の腕を私は掴む

 「皇兄が温めて」

 私は妹なのだから、いいよね?
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