神様、僕に妹を下さい

Act.279 サイド晶(あきら)

 皇兄は、ボタンを外し終えると、無言のままシャツを脱ぎ捨てた

 シャツの下からは、Vの字の襟首のTシャツが現れる

 Tシャツもまた雨に濡れ、皇兄の身体にピタリと貼り付いていた

 「ふぅ」
 皇兄は一息置くと、そのTシャツにも手をかけた

 「あ・・・」
 私は、赤くなって皇兄の身体から視線を外し、うつむいた

 ドクン・・ドクン・・否応なしに、心臓が高鳴りだす
 皇兄の裸を、今まで意識して見た事がない
 幾度となく、お風呂上りや、着替えの最中を見た事があったのに・・男の人だと意識し始めたらこんなに違うものなの?

 「・・どうした?お前が望んだ事だろ?これもぐしょ濡れだから脱がないとダメなんだが・・」

 皇兄は私を見下ろし、Tシャツを脱ぐ手を止めた
 
 そう、すべては私が望んだ事

 「止めるか?」
 皇兄は、声を立てずに笑い、顔を上げれない私の頭を撫でた

 「はぁ、今回はマジ参った。良く考えたなこんな悪戯。それとも会長に何か吹きこまれたか?あの人悪戯好きだからな」

 ポンポンと頭を叩かれ、皇兄は脱いだシャツを拾い上げると、出口へと雨の様子を見に行った

 悪戯・・
 私にとっては、一大決心でも、皇兄にとっては悪戯にしか見えないの?

 どうすれば・・私が本気だと信じてもらえる?

 私は目を閉じ、羽織っていた白衣を肩袖ずつ脱いで行った
 身体は、さっきキャミソールを脱いだから、まとっているのはショーツだけ

 「はぁ・・はぁ・・」
 肩で息をしながら、胸を両手で隠す

 「晶、もうすぐ雨が止みそうだ。だから、お前も準備を・・」

 皇兄がゆっくり、私の方を振り返った

 「・・!」
 皇兄の驚愕した顔が見える

 「皇兄・・私」

 胸を隠している手を退けようと試みた瞬間、皇兄がTシャツを脱ぎ捨て、私の方に走ってくると正面から私の身体を抱きしめた

 「お前、何やってんだ」

 「だって・・皇兄・・悪戯だって言うから・・私、そんな事してないのに」
 涙が滞りなく溢れてくる

 「わかった。わかったから、ごめんな」
 皇兄は片手で私を支え、私もろとも床にしゃがみ込んだ

 「こぅ・・にぃ」

 「ん?あったかいか?」
 
 「うん。すごく温かい」

 すぐに引離されて、服を着させられると思ったのに、皇兄は私の身体をずっと抱きしめていてくれた
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