神様、僕に妹を下さい

Act.302 サイド皇紀(こうき)

『オーロラ姫』は、眠ったまま今日で5日目を向かえた

 熱も日に日に、下がってきて、今日くらいには点滴もはずされるだろう

 「皇紀、今日は一緒に帰ろうぜ」

 授業も終わり、五十嵐がオレに声をかけてきた
 オレは、ここ4日間、学校と五十嵐邸を往復していた

 もちろん、晶が五十嵐の家で眠っているからだ

 「いや・・今日はこの後、予定があってな」

 「何?晶ちゃんより、大事な用なわけ?今日くらいに目覚めるんじゃないの?彼女」

 「かもな」
 オレは鞄に教科書を詰めて答えた

 「なんだよ、もう5日間、目が覚めてないんだぜ。それなのにその余裕は?」

 五十嵐がプクッと頬を膨らました
 余裕に見えるのか?
 
 「余裕なんてないさ。内心、このまま晶が目を覚まさなかったらって考える時もある。けどな、晶に片想いして5年以上のオレには、たったの5日なんだよ」

 それも、最高に幸せな5日間
 晶の傍にいられて、一日中、あいつの顔を見ていられる幸せ
 あいつの存在を感じていられる幸せ

 「そっ・・か。じゃぁ、晶ちゃんが目覚めたら、携帯入れるな」

 「あぁ、頼む」

 五十嵐と別れて、オレは急いで図書室に向かった

 「約束の時間に少し遅れたな」

 時計を見ながら、図書室に向かう中庭を通る

 「ここからの方が近いな」

 図書室の中庭側の窓が開いており、オレは窓の桟を飛び越えて、図書室に入った

 「はぁ・はぁ・・悪い、待たせたな桜場」

 「皇先輩!?何処から入ってきたんですか!?」
 晶のクラスメイトの桜場が、突然のオレの登場に目を丸くしている

 「窓から入ってきた。でも、内緒な。副会長から違反してるって知れたらまずいしな」

 桜場に目で合図すると、2人掛けの机についた

 「これ、今日までの分の授業のノートです」

 「悪いな。すぐに書き写すから、待っててくれるか?」

 オレは急いでノート取り出し、桜場の授業のノートを写し始めた
 
 晶はもう、5日間学校を休んでいる
 その間の授業のノートを桜場に借りる為、図書室で待ち合わせをしていた

 「結構あるな・・悪い、お前も部活があるのに」
 書き写す手を止めずに、桜場に話しかける

 「いえ・・」
 桜場の声に、いつもの元気がない事に気付き、オレは顔を上げた
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