神様、僕に妹を下さい

Act.303 サイド皇紀(こうき)

 桜場にいつもの元気がない
 つい、こないだまでは、晶の為にオレに食ってかかってきたと言うのに

 「どうかしたか?あぁ、大会が近いんだったな。だったら、ノートは帰りにお前の家に持っていくが・・」

 「皇先輩・・すみません」
 桜場が突然椅子から立ち上がり、オレに頭を下げた

 周りにいた生徒達の視線がオレ達に集まった

 「俺・・俺、あいつを守るって言ったのに、あいつに病気うつしたの俺なんです」

 後で、晶が倒れる前の週に、桜場が同じ症状で学校を休んで入る事を聞いた

 ウィルスの潜伏期間は、感染から発症まで5~6日だと聞くから、桜場が発症なのか、晶が発症なのかは今となっては分からない

 病状が出るまで、個人差もあるしな。たまたま、先に桜場に症状が現れただけだ

 「別に、お前が責任を感じることはない。お前だって苦しかったんだろ。あの、ウィルス結構、辛いらしいな」

 ウィルスの症状は一般的な風邪の症状に似ているが、唯一違うのが酷い結膜炎になる事

 特に晶は目やにが酷く、2時間置きに目やにを取ってやった。晶が未だに目を覚まさないのは、その影響もあっての事だろう

 「でも・・あいつまだ目を覚まさないんですよね」

 「晶は、昔から眠るのが大好きだから案外、学校を休めてラッキーと思っているかもな。この後の、地獄も知らずに・・」

 桜場に借りたノートを指差しながら、オレは笑った

 「だから、いい加減座ってくれないか。注目浴びてるだろ」

 桜場を椅子に座らせ、ノートを書き写す作業を続け始めた

 「皇先輩・・コピーした方が早いと・・」

 「かもな。でも、授業を出てない分、細かい説明書きも入れてやりたいし。ついでにお前のノートの添削もしておくから、後で見直せよ」

 オレがノートを書き写す間、桜場はずっと黙ったままだった

 「はぁ、終わった」
 写し始めて1時間。とりあえず、必要な要点だけは押さえたから、後は帰ってまとめればいい

 「ありがとな。桜場」

 「皇先輩・・うまく言えないけど、変わりましたよね。何て言うか・・前より柔らかくなったって言うか・・生意気言ってすみません」
 桜場はノートを受け取ると、ペコリと頭を下げた

 変わった・・か
 そうだな。前は、晶の事で桜場にまで嫉妬心を剥き出しにした自分がいたからな
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