神様、僕に妹を下さい

Act.305 サイド皇紀(こうき)

胸ポケットの携帯電話には何の応答もない

 五十嵐は、晶が目を覚ましたら連絡をくれるはずだから、恐らく晶は眠ったままなのだろう・・

 すぐに帰りたいのだが、今日は生徒会予算の件で、職員会議に生徒会代表として参加する事になっていた


 『すまん。こーちゃん。『もも』を守るって約束、出来んようなった』

 晶が倒れた次の日、学校に行くと両手を合掌して、オレに頭を下げる会長がいた

 オレは、何も言えず、ただ黙ったままだった

 『しばらく、生徒会頼むわ』
 会長はとオレの肩を叩き、その後は生徒会室には姿を見せてはいない

 あの人は、オレの次に晶の事を理解していた人だった
 
 晶の事を本気で好きになって、好きだからこそ身を引いてくれたのだと思う

 沢村会長が戻ってくるまで、生徒会はオレが守らなければならない
 だから、今日の生徒会予算の件も、負けるわけにはいかない

 資料を取りに、生徒会室に入ると、隣の会長室から声がした


 「なぁ、なんで俺が、7位なんや。もうちょっと上位やろ」
 聞き覚えのある、懐かしい関西弁

 「オニイチャンのその、軽いところが上位に食い込まない理由なの」
 相変わらず会長に対しての憎まれ口

 そこには、ソファに寝そべった沢村会長と、その妹、沢村双葉が足を組んでいた

 「どー思う?こーちゃん。俺、いい男ランキング7位なんやで。絶対納得いかんわ。五十嵐より下ちゅうのわ。あいつの方が軽いやんか」

 「五十嵐先輩の方が顔がいいもの」

 「なんやて!」

 2人の会話に、オレは思わず笑っていた
 
 やっぱり、生徒会には会長がいないとだめだな

 「お帰りなさい。会長」

 「おぅ。こーちゃんには迷惑かけてしもたな」
 会長はソファから起き上がると、肩をすくめ、後ろで1つに縛れるくらいの長さの髪が短くなっていた

 「いいえ」
 オレは、首を振ると、机の上の書類の部数を数え始めた

 「双葉、もう1回そのランキング集計取り直しや。それと、いい女ランキングも作成しぃ」
 
 「えーっ・・なんで女のランキングなんて作らなくちゃならないの!だったら、皇紀先輩、私に一票入れてくれますか?」

 「あかん。こーちゃんと俺は入れる相手が決まっとるんや」
 
 そう言って、会長はオレの横に立ち、肩をぽんと叩いた
< 305 / 350 >

この作品をシェア

pagetop