神様、僕に妹を下さい

Act.307 サイド皇紀(こうき)

 「やっぱり、オレも一緒に行きます」

 職員会議が行われる会議室に向かいながら、オレの攻防は続いていた

 「ええって、勝てるんやろ」

 勝つ自身はある
 会長を信じていない訳ではない

 「でも、やっぱり・・オレも行きます。そうでないと、手伝ってくれたあいつの為にも」

 「それって、双葉の事か?」

 「え・・えぇ」

 「嘘やな。『もも』の為か」

 会議室のドアの前でオレ達は立ち止まった

 「俺な、『もも』と別れる時、聞いたんや。『もも』の好きな男は、『もも』の事を幸せに出来るんか?てな。『もも』は何て答えたと思う?」

 晶はいったい・・何て答えたのだろう?

 「答えは・・・ナイショ。俺と『もも』だけが知っとる。悔しかったら、本人に聞いてみぃ。今日あたり、目が覚めるんやろ」

 「何で、それを!?」

 「俺の情報網をバカにしたら、あかん」
 会長は何時になく、偉そうで・・

 「さ、決戦と行こか」
 と会長はドアノブに手をかけた

 「本当に・・大丈夫ですか?」
 
 オレの最後の問いに、会長はブレザーの胸ポケットから

 「大丈夫や。俺には幸運の女神・・いや、ハムスターがついとるもん」
 
 と水色のパスケースに入った、晶の写真を取り出した

 「これ、俺のお守り。もらっといてもええよな。こーちゃん?」

 「えぇ」
 オレは、ゆっくりうなづいた

 オレにはもう、必要ない
 写真ではなく、本人を貰うつもりだから

 「ほら、早う行ってやり。目が覚めた時、1番にこーちゃんが傍にいてやらんと」

 背中をトンッと押され、オレは歩き出す

 「また、明日な。皇紀」

 「!!」

 振り向いた時には、会長の姿は廊下になく、パタンと会議室のドアが閉まる所だった

 会長に今、オレの事、『こーちゃん』ではなく、『皇紀』と・・初めて名前をまともに呼ばれた

 会長の去ったドアに深々と、頭を下げる
 

 玄関に向かい、廊下を足早に、歩いていると、胸ポケットに入れた携帯電話がブルブルと震えた

 「もし・・もし?」

 「皇紀!! 晶ちゃん目が覚めた。早く帰ってこいよ」

 五十嵐の興奮した声に、オレの歩幅が早くなった

 晶が、目を覚ました!!

 「今すぐ帰る」

 携帯電話を切る頃には、全速力になっていた
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