神様、僕に妹を下さい

Act.312 サイド晶(あきら)

庭を抜け、大通りへと出た

 この道は見覚えがある

 右に行けば自宅へ、左へ行けば学校

 家に帰る・・?だめ・・皇兄と繋がっている家には帰れない

 じゃぁ、学校? 学校には皇兄がいるかもしれない

 じゃぁ、何処に行けばいいの?
 私、行く所もないの・・?

 とにかく、五十嵐先輩の家から遠ざからないと・・
 
 家の塀に片手を付きながら、1歩1歩、宛てもなく歩き出した

 「ケホッ、ケホッ」

 喉・・喉が渇いたけれど、お金もないから、何も買うことも出来ない

 裸足ではお店にもは入る事が出来ないし

 「ケホッ・・何処か、お水の飲める所を・・」

 お水を飲める所・・ここしか思いつかなかった

 夢の中に出てきた公園

 辛い時、悲しい時、私はいつもここに逃げてきた

 「結局・・ここか・・」
 あの頃から、全然成長してないじゃない私

 ため息をつき、水飲み場へ行くと喉を潤した

 「これから・・どうしよう?」
 いつも後先の事を考えないで行動するから、皇兄に怒られるんだよね

 あ・・また、皇兄の事を考えてしまった

 「だめだなぁ、私って」

 砂場の横にあるコンクリートで作られた洞穴を覗き込んだ

 昔、決まってここに潜り込んでたっけ
 あの頃は小さくて、簡単に入ることが出来たけど、今は・・私の身長でしゃがんで、ギリギリ

 それでも何とか入ると、洞穴の中で、膝を抱えた
 ここなら・・雨が降っても大丈夫
 風も入ってこないから、ここで暮らせるかな?

 夢の中の男の子も、この公園で会った

 あの夢、前にも見た・・何時だっけ・・
 あぁ、そう、狩野先輩のピアノを初めて聞いた日の夜に見たんだ

 狩野先輩の髪の色が、あの男の子の髪の色とそっくりで、夢に出てきたんだ

 名前は聞かなかったけれど、『星に願いを』は私に元気をくれた

 私の初恋・・
 あの時、ちゃんとあの男の子の名前を聞いておけば、今頃はその子と恋が芽生えていたかもしれない

 そしたら、皇兄の事を好きになる事もなかったかもしれない

 「はぁ・・」
 私は、おでこを押さえた

 そう言えば、夢の中で、男の子を追いかけようとして、勢いよく起き上がった私の目の前に、皇兄がいたっけ

 私の額と、皇兄の鼻がぶつかって・・

 やっぱり、考えちゃうなぁ。皇兄の事
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