神様、僕に妹を下さい

Act.321 サイド晶(あきら)

 皇兄はいつも優しかった

 私がバカな事をして怒っても、その言葉の裏には優しさがいっぱい詰まってた

 だから、今回もそう

 あんな事をした私を、傷つけまいと、ついてくれた・・皇兄の優しい嘘

 私・・こんなに優しい人を好きになったんだね

 こんなに、私の事を考えてくれる人を好きになったんだね

 この人が、私の初恋の人でよかった

 私の人を見る目は、間違ってなかった

 それだけは、自分自身に100点満点をあげたい

 このまま、皇兄のこの優しさにすがる事が出来たら・・

 「晶」
 
 皇兄の両腕が私の背中に回され、抱きしめられそうになる前に、私は皇兄の胸から離れた

 ここで抱きしめられたら、きっとダメになる

 皇兄には、皇兄の道があって、私の為に外させるわけにはいかないの

 「どうした?」

 「皇兄」

 「ん?」

 「皇・・ありがとう」

 ぴょん
 私はうさぎの様に皇兄から1歩跳ねた

 「あき・・ら?」
 私の行動に、皇兄は疑問符を投げかけている

 私は、とびきりの笑顔を作った

 「私、桜庭 晶は、明日からちゃんと桜庭 皇紀の『妹』に戻るね」

 「な・・」

 「これからも迷惑かけるけど、宜しくお願いしますね。皇・・お兄ちゃん」

 私は、いつから皇兄の事、『お兄ちゃんと』呼ばなくなったのだろう?

 明日からは、ちゃんと『お兄ちゃん』と呼ぼう

 「さてと、5日間も眠っていたせいか、身体が鈍ってます。お腹もすいちゃったし、帰ろうっか。お兄ちゃん」

 パチンと手を叩き、公園の出口に向かって、手を大袈裟に振って歩き出す

 皇兄の顔を見ることは出来なかった

 「・・かよ」

 「?」

 「それが、お前の答えかよ。晶!!」

 皇兄が私の前に立ちはだかった

 「こっち向けよ晶。オレの方を向けって」

 皇兄の顔を見れないでいる私の肩を、皇兄は掴んだ

 「好きだ」

 「・・!」

 「お前が好きだ。晶」

 もう、やめて皇兄・・

 「ちがっ・・」
 私は、皇兄の声を聞くまいと耳を塞ぐ
 その手を、皇兄は払いのけた

 「ちゃんと聞いてくれ。オレはお前を・・」

 「違う・・皇兄の『好き』は、私の『好き』とは違う」
 
 違うの・・
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