神様、僕に妹を下さい

Act.322 サイド皇紀(こうき)

  晶が好きだ
 
 言葉にすれば、簡単なことだったのに、ずっと言えなかった

 それをようやく、晶に伝える事が出来た

 「皇兄・・」
 晶は涙を流しながら、ゆっくりと、オレに向って歩いてきた

 「私・・嬉しい」
 そして、オレの胸の中に顔をうずめた

 嬉しい・・オレの方がその何倍も嬉しいよ
 やっと、お前をこの手に抱けるのだから

 早く抱きしめて、オレのものだと実感したい
 晶と想いが通じ合えたら、やりたい事が沢山ある

 抱きしめた後、口づけしたら、ビックリするよな
 でも、したい。軽くなら許してくれるか?
 
 ダメだ・・オレ。嬉しすぎて、どんな表情をしているか、自分で想像がつかない

 「晶」
 でも今は、目の前の晶をオレの腕に抱きしめる事
 
 晶の細い背中に腕を回し、やわらかい身体を抱きとめる寸前、晶は意を決したように、オレから離れた

 ?
 体勢が辛かったか?
 力を入れすぎたか?病みあがりで、体力もおちているだろうし
 ごめん晶。今のオレは、自分自身、手加減出来ていないのかもしれない

 「どうした?」

 「皇兄」

 「ん?」

 「皇・・ありがとう」

 晶はそう言い残し、1歩俺から横に飛んだ

 「あき・・ら?」
 ありがとう・・って、言いたいのはオレの方・・
 
 ・・・・?晶の様子が変だ・・
 具合が悪くなったのか?

 晶はコクンと息を飲んで、少し顎を上げると、オレに向って笑顔になった

 オレの嫌いな、晶の作り笑い
 晶は、無理を押し通そうとする時、決まってこの笑顔になる

 「私、桜庭 晶は、明日からちゃと桜庭 皇紀の『妹』に戻るね」

 「な・・」

 晶は澄んだ、良く通る声で宣言した

 「これからも迷惑かけるけど、宜しくお願いしますね。皇・・お兄ちゃん」

 何・・言ってんだこいつ?
 しかも、意識しながらオレの事を『お兄ちゃん』と呼んで

 それが・・本当のお前の気持ち?
 神社でお前が言ってくれた『好き』という言葉は嘘だったのか?

 「さてと、5日間も眠っていたせいか、身体が鈍ってます。お腹もすいちゃったし、帰ろうっか。お兄ちゃん」

 パチンと晶は手を叩くと、出口に向って歩き出した

 その間、オレには1回も目線を合わせない
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