神様、僕に妹を下さい

Act.327 サイド晶(あきら)

 『皇兄の好きは、私の好きと違う』

 私は、そう言って口をつぐんだ

 皇兄の優しい『好き』という嘘を、これ以上聞いていたら、自分が錯覚を起こしそうになった

 もしかして、皇兄も・・?なんて
 今、落ち着いて考えると私、神社での出来事の前に、皇兄に『好き』と伝えて、ちゃんと断られたはずなのにね

 でも今日の、皇兄もおかしいよ?

 ねぇ私、ちゃんと『妹』に戻るから、もう大丈夫だから・・もう私を心配しないで

 だから、『妹』に戻るって、宣言もしたでしょう?

 これ以上、私に気を使う事ないよ

 パフッ

 黙って立ち尽くす私の背中に、皇兄のブレザーの上着がかけられた

 あ・・温かい

 「こぅ・・お兄ちゃん」

 やっぱり、意識していないと皇兄と呼んでしまいそう

 「ちょっといいか」

 皇兄の掛け声と共に、私の身体がふわりと浮いて、公園のベンチへと移動させられた
 
 相変わらず、私に負担のかからない抱きかかえ方

 その行動1つでも、優しさが感じられる

 皇兄は私をベンチに座らせると、水場へと向った

 何をするつもりなのだろう・・?

 「晶、足出して」

 私が、恐る恐る足をだすと、ピタピタと濡れたハンカチが足をなぞった

 「なんで、裸足で逃げ出すんだ?せめて、靴下くらい履く時間はなかったか?」
 
 私の足の裏は、公園の砂だらけで、皇兄はそれを丁寧に拭いてくれていた

 「だって・・お祭りに行ったときも、靴下履いてなかったから・・」

 皇兄のいつもの口調に、私も何時も通りに答えて、自分の言った事が急に恥ずかしくなって、頭をコリコリとかいた
 
 私、またやっちゃたけど、やっぱり、ホッとする
 皇兄が私の行動に対して、呆れて仕方ないなって言う口調

 「じゃぁ、せめてスリッパでも履いて逃げ出せばよかったろ」

 ペチッと軽く私の足の甲を、皇兄は叩く
 
!そっか。その手があった

 「あ・・ふふっ。そうだね」
 私って、いつも後先考えて行動しないから、皇兄に指摘されて初めて気付く事が多いんだよね

 皇兄とまた、こんな会話が出来るなんて・・

 神社での出来事・・うううん。皇兄の事を意識し始める前に戻れたみたい

 ありがとう。皇兄
 
 やっぱり私は、あなたの前では、妹が1番似合うのかもしれない 
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