神様、僕に妹を下さい
Act.336 サイド晶(あきら)
『もしも離れている時は、この時計を見て思い出せ。オレ達は同じ時を刻み、一緒の時間を歩いている。オレの心は、常にお前に向いていることを・・』
公園で腕時計をはめられながら、皇兄に言われた言葉
まるで・・プロポーズされているみたいで、うれしくて、何度思い出しても泣いてしまう
もう・・泣くのはこれが最後って言ったのに・・
p・p・p
という発信音が私の耳に入ってきて、薄っすらと目を開けた
「もう、なんで邪魔するかな」
私は不機嫌に目覚まし時計を止めると、もう一度目をつぶった
折角、皇兄との幸せな夢を見ていたのに
『オレの心は常にお前にある』
なんて幸せな言葉なんだろう・・まるで夢みたい
ゆ・・め?
「まさか!?夢!!」
皇兄の言葉も、公園での出来事もみんな夢!!
一気に眠気がすっ飛んで、私はベットから起きた
手探りで枕元を探り、指先に冷たい塊があたり、持ち上げる
「はぁ・・薄紫色だぁ」
腕時計の文字盤が薄紫色になっているのを見て、夢でない事を確認できた
その後に、時計を見て現実を知る
「やばい!遅刻だよ」
私は、なんとかウィルスのせいで、一週間学校を休んでいて、今日が久々の登校デビューなのだ
一週間も休んだ次の日に遅刻だなんて洒落にならない
急いで腕時計をはめて、制服に着替えると、怒涛の様に階段を駆け下りた
「おか・・お母さん、私、トーストをかじりながら学校に行くから焼いといて」
「はい、はい。やっぱり朝は晶ちゃんの階段の駆け下りる音でないと始まらないわね」
台所にいるお母さんに声をかけ、お母さんの呟きを背に洗面所へ向かう
何をのんきな事を。こっちは必死なのに
急いで顔を洗い、タオルで拭きながら台所に行くと、焼き立てのトーストが席に置かれてあった
「お母さん。皇兄は?」
皇兄の姿が見えない。まさか、まだ寝てるなんてことは・・・
皇ちゃんなら、学校にいっちゃったわよ」
「え!!」
私・・一週間ぶりの学校だから・・今日は皇兄と一緒に登校しようと思ったのに
「さっき行ったばかりだから、まだ間に合うかもよ」
「それを早く言って」
お母さんに文句をいいつつ、トーストを片手に家を飛び出す。
皇兄に追いつけるのだろうか