神様、僕に妹を下さい

Act.339 サイド皇紀(こうき)

 「うううん。今迄一緒に登校した時は、皇兄いつも先に行っちゃってさ。私、追いつくの大変だったんだもん。でも今日は違うね」

 晶は嬉しそうに笑った

 鈍いお前にしては、よく気付きました・・だな

 確かにそう
 昔、片思いだった頃、晶と一緒に登校する時は、わざと早く歩いたものだ

 晶の先に立って、立ち止まる
 すると晶はオレに追いつこうと、夢中で走って追いかけてくる

 だから歩幅は合わせない

 その瞬間だけ、晶はオレの姿しか見ていないから

 晶にオレだけを見てもらいたくて・・今思えば、ガキみたいな事だが、あの時は必死だったんだ

 だけど今は違う。晶の瞳は、ちゃんとオレを捕らえてくれている

 だからもう、早く歩く必要もない

 「何、言ってんだか」
 昔の自分を思い出して、少し照れる自分がいて、オレは歩きだした

 「晶・・こら、行くぞ」

 立ち止まったまま、動かない晶に声をかける

 「はーい」
 元気な返事と共に、オレの左手に、温かい小さな指が絡んできた

 「晶!」
 突然の出来事に、オレは目を丸くする

 「ふふっ。自分の幸せ掴んじゃった」
 晶は、悪戯っぽくオレに笑いかけた

 オレは、絡まれた指を繋ぎなおした

 「悪いが、その幸せはオレが頂いた」

 悪戯っぽく、オレも笑い返す

 この手は・・絶対離さない・・・もう2度と

 
 
 「朝から熱いですねぇ。お2人さん。見てるこっちが恥ずかしいしょ」

 「!」
 この声は・・・

 「いが・」

 「あっ、五十嵐先輩だぁ」

 オレが五十嵐と叫ぶ前に、晶が嬉しそう言うと、オレの手を放して五十嵐の方へと駆けて行った

 おいおい、晶

 たった今、2度とこの手を離さないと誓ったオレの立場は・・・

 晶はあの病気の一件があってから、妙に五十嵐になついていた

 まるで、妹みたいに

 「元気になってよかったね」

 「はい。先輩のおかげです。先輩、あの時は突然いなくなってごめんなさい」

 「いいよ。君が無事だったんだから」

 2人の会話を聞いていると、妙にチクチクとオレの心臓に針が刺さる

 「晶」
 オレは、会話に夢中になっている晶の体を持ち上げると、五十嵐から遠ざけた

 「皇兄?」

 まったく、無邪気な顔をして、オレを惑わせるのだから困ったものだ
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