神様、僕に妹を下さい

Act.340 サイド皇紀(こうき)

「まったく」
オレは目を細めながら、ピンッと晶の額にデコピンをした

「ふにゃっ。何をするの?皇兄」

「別に、まだ寝ぼけているんじゃないかってな。起こしてみただけ」
やきもちを妬いたなんて、恥ずかしくて言えるか

「それより晶、腕時計を出して」

「?」
晶の左腕が前に出され、晶の腕に並行してオレも左腕を出した

オレの白の文字盤と、晶の薄紫の文字盤

「五十嵐、携帯で時報を呼び出して、読み上げろ」

「え?・・あぁ、分かったよ」
五十嵐は、携帯で時報に電話し、「8時まであと30秒」と声をかけた

「時計のネジを一旦止め、秒針を8時に合わせて」

オレの言う通りに晶は時計を止め、秒針を8時に合わせた

「五十嵐にカウントしてもらうから、8時になっら時計を動かし始めろ。五十嵐、5秒前からカウント頼むな」

「はいはい。いくよ、5・4・3・2・8時」

五十嵐の掛け声と同時に、2人時計のスイッチを入れる

「あっ・・動き出した。そっか、これで同じ時を刻んで、一緒の時間を歩くんだね」

晶がニッコリと笑う

「そうだな」
オレもうなづき、晶の背中をトンッと押した

「久々の学校なんだから、今日は少し早めに行け。それと放課後、休んだ分の勉強会をするからな。16時に図書室に来いよ」

「わかった。先に行くね」

オレは、背中のリュックを揺らしながら遠ざかって行く晶の姿を眩しく見ていた

そう言えば、晶の寝ぐせを直してやれなかったことが心残りだが、あれはあれで晶らしくてカワイイか

「!」
学校の門をくぐって晶の姿が消えようとした時、再び晶の姿が現れ、オレに向かって走ってくる

まさか寝ぐせを・・? まさかな

「どうした?忘れ物でもしたか?」
膝をかがんで、晶の顔を覗き込む

「はぁ、はぁ、はぁ。あのね、私ね・・」

「なんだ?」

「私・・私の心も、いつも皇兄に向いてるからね。それだけ伝えたくて。じゃぁ、これでホントに行くね」

晶は耳元でそう囁くと、オレの方を振り向く事もなく学校の門へと消えて行った


「皇紀、皇紀」

五十嵐がオレの名前を呼びながら自分の腕を回してオレの目頭へと当てた

「なに・・をする」

「俺もやりたくて、やってるんじゃないんだけどねー。でもそんな顔、晶ちゃんに見られたら嫌だろ」


そんな顔・・
五十嵐の言葉に、やっと気付く

無意識の内に、自分が泣いていることに・・
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