神様、僕に妹を下さい

Act.059 サイド晶(あきら)

よーく考えてみると、皇兄以外の男の人と学校へ行くなんて初めて

狩野先輩は私の体調を心配して、家まで迎えに来てくれたのだ

優しい先輩。今も私の歩幅に合わせて歩いてくれている

これが皇兄だと、常に前を歩いては時々止まって私を振り返る。私が追いつくとまた歩き出す。それの繰り返しだっけ

「晶ちゃん?」

「はへ・・。いや、はい」

危ない、危ない。もう少しで、マヌケな返事をしてしまう所だった

「君のお母さんが言ってたプリクラって何のこと?」

「それはですね」

出かける際お母さんが念押して言ってきたのだ

『来週には荷物を送りたいから、プリクラを撮ってきてね』

・・と。荷物の送り先は単身赴任のお父さんへ
条件は月一の荷物の中に、皇兄と私のツーショットのプリクラを入れる事
出来ればコスプレ付きがいいんだとか・・

『無理だって、まだ皇兄に何もいってないよ』

私はあせって言い返す

毎回、毎回、あの手この手を模索して皇兄をプリクラの機械まで連れて行くのって大変なんだってば

『あら皇ちゃんじゃなくても、譲さんのもう一つの条件を満たしているから大丈夫よ』

もう一つの条件・・?なんだろうもう一つの条件って?

『響さん、晶ちゃんを宜しくお願いしますね』

最後には、やっぱり狩野先輩の手を握っていたお母さんだった


「へー。面白いお父さんなんだね」

「はい、お茶目な人なんです」

プリクラの事を一通り話し終えると、学校の門についた

「じゃぁ、僕はここで。放課後は音楽室に来る?」

「はい、行きます。ありがとうございました」

下駄箱で別れ、内履きに履き替えていると後ろから萌ちゃんが抱きついて来た

「うわっ。萌ちゃん、ビックリするじゃない」

「あ~き~ら~あんた、知ってたの?」

「何を?」

抱きつかれながらも、つま先で靴を整えた

「皇紀先輩が・・」 

萌ちゃんは息を切らして言葉が途切れ途切れだった

「先輩が・・さわ・・沢村双葉と付き合うって、知ってたの!」


 
そう、プリクラの条件

必ず、兄妹で写っている事
 
ただし、お互い特別な人が出来たら、別々に写っても良し

・・だったけ。そんな日がこんなに突然来るとは思っていなかった
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