神様、僕に妹を下さい

Act.071 サイド晶(あきら)

ゴン!
 私の頭に衝撃が走り、テン・テンとサッカーボール転がって行く

 「痛ったー!」
 
 「おー。悪い。悪い・・て、なんだ『にわ』か」
 クラスメイトの『桜場』が駆け寄ってサッカーボールを拾い上げた

 「今帰りか?早いじゃん。今日は行かないのか?音楽室」
 
 「な・何であんたがその事知ってるのよ」

 「お前もある意味、有名人・・だろ?」
 桜場はいたずらっぽく笑った

 私が有名人?意味が分からない

 「『桜にわ』さん。少し話があるんですけど、私達と一緒に来ていただけません?」

 首をかしげる私の後ろに、楽譜を持った3人の上級生が立っていた

 「私ですか?」
 
 ここは玄関。周りを見渡すが、私と桜場以外は1年の下駄箱には見当たらない

 「あなたでしょう。『桜にわ』さん」

 いや、『桜ば』なんだけど・・と言いたいが、睨まれているのが感じられてとても言い出せない雰囲気

 「時間、かかります?」

 今日は皇兄のために、サバの味噌煮を作りたいから急いで帰りたいんだけどな

 「あなたの返答次第かしら?こっちに来て」

 両肘を掴まれ、私を校舎内に連れて行く上級生の顔の前をサッカーボールが横切った。驚きのあまり、上級生の手から楽譜が飛び散る

 「ちょっと危ないじゃない!」
 上級生の一人が叫び、飛んで来た方向を向いた

 「悪いね先輩方。そいつは俺と一緒に帰る約束してんの。つまり俺が先客なわけ」

 桜場は笑顔から真顔に変わり、私の腕を掴み自分の元へ引き寄せた

 「帰ろうぜ」

 「え?え?」

 桜場は私の肩を抱き、玄関から引っ張るように連れ出し

 「走るぞ」

 と校門までダッシュさせた。背後から『ちょっと、待ちなさい』という上級生の声を無視して・・

 学校が見えなくなるまで走ると、息をついた

 「ハァ、ハァ、ハァ 女って怖いな・・」

 「ゼェ、ゼェ あの人達って桜場の知り合い?」

 「そんな訳ないだろ。第一、あいつらのご指名はお前だったろ」

 そうでした

 「でも私、あの人達知らないよ」

 「楽譜を持っていたから、吹奏楽部の連中だろ」

 「あっじゃぁ、部の勧誘?」
 縦笛もろくに弾けない私なのにな。マラカスくらいなら出来るかも

 桜場は瞬きを数回して、「信じらんねぇ」と呟いた
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