神様、僕に妹を下さい

Act.091 サイド晶(あきら)

『くそっ、またあいつにしてやられた』
 普段、あまり感情を表に出さない皇兄から、何度かこのセリフを聞いた

 入学式の生徒会長のあいさつの時も、直前会長がいなくなったとかで、皇兄が替わりに祝辞を述べていた

 その他にも、そんな事が多々あったらしく、私を含め1年生は皇兄が生徒会長だと思っているくらいだ

 そして皇兄のセリフが
 
 『出来るなら、あいつには関わりたくない。いや関わるな』だったっけ



 「あの・・もうこの辺で」
 生徒会長に手を引っ張られ、生徒指導室を出る
 先生が後ろから追ってくる事はなかったのを確かめて、私は立ち止まった

 「この度は、ご迷惑をおかけしました」
 家への連絡を逃れたからよかったけど、これ以上関わらない方がいい

 沢村双葉の兄だし、皇兄の上司になる訳でしょ

 頭を下げて、腕を振り払おうとしたが、彼はしっかり掴んだまま離さない

 「あの・・」

 「なぁ、頬ずりしてもええか?」

 「はい?」
 頬ずりって?

 「だめや言うても、しちゃうけど」

 躊躇している私を引き寄せ、彼は私のつむじに頬をすり寄せた

 「あの、ちょっと」

 「そうそう、この感じや。久しぶりや、『もも』」
 
 私の横を数人の生徒がジロジロ見ながら私達を避けて通り過ぎていく
 そう、ここは廊下のど真ん中なのだ

 「こ・・ここではちょっと止めてください」

 「場所を変えたらええんか?」
 
 そういう意味じゃなく・・・

 「『もも』さんにしたらどうですか?それに痛いです」
 殴られたところがだんだん熱をもってきたらしく、痛くなってきた

 「あぁ、すまん。けど、『もも』は死んでしまったんや」
 寂しそうに呟くと、私を掴んだ手を緩めた

 亡くなった・・の?そしたら私悪い事を言ってしまったかな

 「ごめんなさい。私、酷いこと言って」

 「ほな、もう少し一緒にいてくれるか?あんたのその傷も冷やさなあかんしな」

 「冷やすっていっても、どこで?」

 「それは、もちろん生徒会室。専用の冷蔵庫もあるんや」

 「せ・生徒会室!だめ、私、行けません」
 生徒会室には皇兄がいるじゃない。この顔を皇兄に見せる訳にはいかないの

 「双葉と違ってホント、遠慮深い子やなぁ。ハハハ」

 だから違うんだって、お願いやめてよぅ・・
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