神様、僕に妹を下さい

Act.097 サイド皇紀(こうき)

「きゃぁぁぁ」

 コーヒーを入れていると、2階から母さんの叫び声が聞こえた

 朝から元気があっていいな。どうせ、ゴキブリでも見付けたのだろう

 晶は弱そうに見えて、虫が意外と平気で、虫ごときであんな声は出さない

 パタパタパタとすごい勢いで駆け降りてくるスリッパの音がする

 この音は、母さん

 「何て事なの!どうしてあんな事に」
 母さんは半分半狂乱でキッチンに入ってきた

 「落ち着けよ。母さん」

 「あれを見て、どう落ち着けって言うのよ」

 どうやら、今回の虫は相当大きかったらしい
 声を立てずに笑うと、鋭く睨まれた

 「笑い事じゃないのよ。あれじゃ、お嫁に行けなくなったらどうするのよ」

 お・お嫁?

 「母さん、話が掴めないんだが・・」
 
 「晶ちゃんが、晶ちゃんがね」

 晶?お嫁?

 「晶が何?」

 「晶ちゃんがその最近、反抗期になったんじゃないかって。お母さんに口ごたえばかりするから。皇ちゃんからも何か言ってやって」

 何かうまく濁された気がするが・・
 晶が反抗期?

 どうせ母さんの事だ。何かうるさく言ったんだろう
 晶だって、反抗したくもなるだろうさ

 「その、晶は?」
 
 「今日は一日中部屋でやりたい事があるから、出てこないそうよ」

 「へー」
 オレが出掛けて、顔を合わせない様にしようと考えていたが、晶のほうから部屋にこもるとは・・

 「ごちそうさま」
 カップを流しに置く

 「皇ちゃん、朝ごはんは?」

 「いらない」
 昨日の朝、サバの味噌煮と揚げだし豆腐を食べて以来、口にしたのはコーヒーとひまわりの種2つだけだ

 食欲がわいてこない

 「学校に行ってくる」
 学校は今日は休みなので、制服のズボンに上はTシャツというラフな姿

 「皇ちゃん、明日も学校に行くの?」

 「なんで?」
 出来ればそうしようと考えている

 「明日11時から、晶ちゃんと出掛けたいと思ってるの。帰りは夕方になるから、留守番してくれないかしら?」

 「あぁ、いいけど何処行くの?」

 「響さんとデートさせるの。でも、晶ちゃんには内緒よ。今何言ってもあの子聞かないから」

 「あぁ」

 狩野とデートか
 聞かなきゃよかった

 自分の中のもやもや感を抱えながら、土曜日は過ぎていった
< 97 / 350 >

この作品をシェア

pagetop