こうして電話で話していると、まるで付き合っていた頃に戻ったようだ。



私の耳に心地よい、ちょっと低めの声。



静かな場所では、話し方がゆっくりになるクセもそのままだ。



退院してからというもの、家にいるときはふたりでワイワイ騒がしくやっているから、そんなことにも気づかなかった。



話し方こそ幼いけれど、それはそれで愛しく感じる。



あーあ、これで前みたいに「ミオ」って呼んでくれたら、カンペキなのにな。



私は、ソファに寝転んだまま目を閉じた。



この声を、もっと近くに感じられるように。



「明日になったら会えるね」



『やっぱりミオちゃん、さみしいんでしょ』



「べつに、さみしくなんかないよ」



『嘘だー』



「それはリュウくんのほうでしょ」



『ぼくだって平気だよーだ』



どうでもいいやりとりをして、あはは、と笑う。



そんなことを繰り返して、それから、「おやすみ」と電話を切った。









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