それは、当たり前のこと。



だって私は、川原リュウヘイと結婚したのだから。



新郎の格好をして歩いてくるのは、リュウくんに決まっている。



だけど、そうではない。



そういうことではなくて…―。







私は、金縛りにあったように動けなくなってしまった。



ビールを飲むのも、忘れた。



まばたきも、忘れた。



下手すると、呼吸すら忘れそうだった。



私の目は、彼の顔に固定されていた。



ゆっくり緊張気味に歩く彼は、それでもカメラの真横を通るときに、カメラ目線で少し笑った。



それを見て、ドキッとする。



その表情は、今のリュウくんにはないものだった。



無邪気なコドモのそれとは違う、オトナが見せる笑顔をしていた。





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