背を向けて走り出した彼に、もう一度呼びかける。



「ねえー!」



私は、体中のありったけの力を振り絞って思いきり叫んだ。



さっきよりも遠いところで、つんのめるようにして彼がまた立ち止まる。



「なにー!?」



彼も、大きな声でこたえてくれた。







「呼んで!!」



「えーなにー!?」



「なーまーえ!呼んでみて!!」



「名前!?」



「そう!早く!」







彼が、不思議そうに首を傾げた。



そして、しばらく私の顔をじっと見ていたかと思うと、まるで何かに納得したように大きく頷くと、スゥーッと息を吸い込んだ。





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