声

彼は結局、予定より３０分遅れて到着した。



挨拶もそこそこに、あわただしく準備に取り掛かる。



新婦の私は、ヘアメイクの都合で準備完了までにかなりの時間がかかったけれど、新郎の彼は、それほど時間をかけずに済んだのが幸いだった。



「いやぁ、コンビニを通り過ぎたところの交差点を抜けたら、すっかり渋滞もなくなってさ。よかったよかった」



ひと段落したところで、彼が笑いながら言った。



「…じゃあ、コンビニに寄らなかったら、もっと早く着いたんじゃないの？」



と、ちょっと嫌味っぽく言ってみたが、笑顔でかわされた。



「２、３分の違いだよ」



…たしかにね。



とにかく、こんな日にケンカするのもバカバカしいので、許してやることにした。