お義母さんたちが話をしている間、私たちは早速ガサガサと紙袋から箱を取り出し、中身をチェックした。



リュウくんは、ふたりきりになった途端によくしゃべるようになった。



「僕、今日プリン3つめだよー」



なんてうんざりしたように言いながらも、うれしそうだ。



「でもこれ、デパートに入ってるケーキ屋さんのプリンだから、コンビニとかよりおいしいよ。リュウくんにはもったいな…あ、ちょっと!」



リュウくんは、ひょいと私の手からプリンを取り上げて、ホクホク顔をしている。



結婚式の披露宴で、やっと料理を食べられると喜んだときのようだ。



あのときは4人に妨害されて、結局食べられなかったけど。



私は思わず、ふふ、と笑って、こういうところは記憶がなくなっても変わらないんだなぁ、と思った。



そして、ふと気がついた。



私、事故以来、はじめて自然に笑顔になれた…―



たったそれだけのことだけれど、緊張続きだったから、肩の力が少し抜けた。



笑顔のまま、プリンをひとくち食べた。



とても甘くて、おいしかった。





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