あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
ずっと……ずっと私は死にたかった。
毎日そう思いながら私は生きてきた。
死にたいのに死ねない。
それは私の環境のせい。
私は綾野ホールディングスの一人娘である綾野幸希として今まで生きてきた。
生まれた頃からお金に不自由などなく、親から愛されずに育った。
お父様は仕事が忙しくて、家族を構わず家に帰ってくることなんてほとんど無い。
お母様はそんなお父様に不満を抱いており、見せつけるかのように毎日違う男の人を家に招き入れるようになった。
そして次第に私に暴力をふるうようにまでなった。
最初はどうしてこうなったのかわからないし、痛くて苦しかった。
見えないところに痣をたくさん付けられた。
親に見離された子だと学校の皆には噂され、私への扱いは酷くなった。
優しかった両親はもうどこにもいない。
唯一覚えているあの言葉ももう……。
『貴方は私たちの幸せな希望よ』
……もうきっとない。
私はもう幸せな希望なんかじゃない。
不幸にする人なんだ。
そんな私に婚約者ができた。
お父様の知り合いでIT会社の社長のご子息。