あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした

無事に高校に通うことができた時は少しだけ自由に慣れたような気がした。
でもそれはほんのひと時に過ぎなかった。
『あんたがあの綾野幸希？』
そう私に喧嘩腰に言ったのは確か…ファッションデザイナーである父親の娘の長谷川夢だ。
琳斗とはライバル関係にあるのよね。
面倒だな。
私はまだあまり経済とかには関わっていないから詳しいことはわからないけど。
でもお互い人気のデザイナーだ。
そんなお父様にこの子は憧れてるんだっけ？
『どうしてうちのパパと契約しなかったの！パパ毎日苦しんでるのよ！なのにあいつと…あの篠野琳斗と契約するなんて……っ！！』
その話は私にはあまり関係のないことだな。
だって契約するもしないも判断したのはうちのお父様なのだから。
私に文句言っても困るな。
私は彼女の目を見て言った。
『貴方のお父様の努力が琳斗より足りなかったのではないの？』
その言葉は彼女に火に油を注いだだけだったみたいだ。
『ふざけないで…！！あんたなんか両親に愛されていないくせに！見離されてるくせに！』
……本当のことをこんなにも堂々と大きな声で言われたことなんて今までにあっただろうか？