あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
「先輩……」
もしかして見られたのかもしれない。
私は優星の言葉を遮って言った。
「…今日はどこ行くの?君がスケジュール立てたんでしょ?」
苦し紛れだったけどそれでもいい。
だって君は……。
「……」
「どうしたの?早く行こう!雨が強くなる前に」
私は無理やりにでも笑った。
「今日はですね…」
──君は私が言いたくないことは聞いてこないもんね。
それも私には居心地が良く感じたの。
君は知らなくていい。
私の……黒い部分を……。
君には笑っていて欲しいの。

「優星、ここ景色綺麗だね!」
「ですよね!僕のお気に入りの場所なんです!幸希先輩に見せたくて!」
「…そっか、ありがとう!」
私はさっきのことは頭の隅においやって今、目の前に広がる景色だけを見つめる。
こんな綺麗な景色がこの世界にあったんだね。
あ、そうだ!
「優星!写真撮ろう!」
「はい!」
私はスマホを持って優星の腕を掴む。
優星と一緒に写真撮ったことなんて考えてみれば今までなかったかも。
それに……思い出を作りたいな、なんてね。
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