あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
たったの1度でもいいから「愛してる」そう…お母様に言って欲しかった。
「産まなきゃよかったなんて思ってない」って言って欲しかった。
「いらない子なんかじゃない」って笑って言って欲しかった。
「必要な子よ」って言って欲しかった。
最後に…名前を……呼んで欲しかった。
お父様にも……必要とされたかった。
綾野幸希…として。
会社の後継の娘としてではなく一人の人間として……必要とされたかったの。
「あぁぁぁ……っ」
私の願いは何一つ…叶わない。
何一つ……。

それから数時間がして私は歩いた。
雨が降り止むことはなく、さっきより強くなった気がした。
私は止まらぬ涙を流しながら…"ある場所"へと向かった。
もう……疲れてしまった。
痛いのも苦しいのも……私はもう耐えられない。
もう……嫌なの。
必要とされないのも。
両親に愛されないのも。
産まなきゃよかったと言われるのも。
全部……疲れてしまったの……。
だから……。
「…もう、いいよね?」
私は橋の前で足を止めた。
手すりに手を置き、私は静かに見つめた。
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