あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
そして幸希が小学校に上がる頃にはあの日以来会っておらず、後継者教育のために私は幸希に久々に会った。
『お久しぶりです、お父様』
今思えばその日からだった思う。
幸希がその笑顔を私に向け始めたのは。
『元気そうでなによりだ』
私が一言そういうと幸希はピクっと反応したかと思うとすぐに『はい、お陰様で』と笑って言っていた。
もっとあの時ちゃんと見ていればわかったのだ。
あきらかに元気そうではなかった。
小学一年生とは思えないほどの細さ。
そして落ち着き。
何かを諦めているような何もない瞳。
その時から幸希は死にたいと考えていたのだろうか?
そして幸希の体にたまに痣があるのを目にするようになった。
転けたりぶつけたりしたのだろうと勝手にそう思っていた。
だから気にならなかった。
少ししてから幸希に婚約者ができた。
幸希は反対することもなくすんなりと了承した。
これが私の仕事だと言わんばかりだった。
中学校に上がる頃にはさらに痩せていて、瞳には色なんて宿さないと言った瞳だった。
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