あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
でもやっと…やっとわかったよ、幸希。
幸希の誕生日にわかってしまった。
幸希は死のうとしていたんだ。
あの雨の日に……。
そして今、私の目の前にいる少年がそれを止めてくれたのだろうか?
私はそう幸希の昔のことを葉山優星に話した。
正直、葉山優星の言葉は信じ難い内容だった。
妻が幸希に暴力を振るい、暴言まで吐いた。
そんなこと…あってはならない。
なのに幸希はいつも笑っていた。
嫌、無理をして笑っていた。
幸希はいつも私に助けを求めようとしていたのに私はそれに気づいてやれなかった。
……違う。
気づかない振りをしていたのだ。
無視をした。
娘の助けを私は拒否したのだ。
仕事を理由に……。
私は最低な父親だ。
娘を幸せになんてしてやれてなかった。
「すまない、葉山優星くん…」
私は娘の幸希のことを何にも見てやれていなかった。
悔やんでも悔やみきれない。
幸希はもう生きるのに疲れてしまった。
だから飛び降りたのだ。
幸希……頼むから逝かないでくれ。
< 168 / 179 >

この作品をシェア

pagetop