あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした

あやの先輩がドンッと押したけど力が弱いのか？
まだ知らない男の胸の中にいた。
嫌だ……っ。
「今日はもう予定ないんだろ？例の男の子には1週間もスルーされて」
例の男の子って僕のこと？
どうしてあの男が知ってるんだ？
僕はグッと手を握りしめる。
僕でさえあやの先輩を抱きしめたことなんてないのに…！
でも……聞き間違いじゃなければあやの先輩はあの男のこと…「栄知」って呼んでた。
もしかして知り合いなのか？
それにあの男も「幸希」って……。
「あんな男やめて俺と結婚しよ、幸希」
その瞬間…あの男と目が合った。
鋭い目つきで「あやの先輩は俺のだ」と言っているような…そんな気がした。
そしてその時僕は思い出した。
あの時…僕があやの先輩のことを好きだとわかった時にクラスメイトの女子達が話していた。
IT会社の次期社長の──。
「俺は幸希のことが好きだから俺は幸希のこと傷つけない」
『え？綾野グループのご令嬢が惚れてるの？』