あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
私はその姿を見て思ったの。
──私のことは絶対に実らない。
優星はたぶんまだ自分の気持ちに気づいていないけどきっと……近いうちに気づいてしまうだろう。
どうして…よりによってあの人なの?
その人は婚約者がいるんだよ?
綾野グループのご令嬢で一人娘なんだよ?
それに…噂ではクラスメイトからも親からも虐められてるんだよ?
なのにどうして……?
どうしてよ、優星。
「優星、これ半分あげる」
「え、いいんですか?ありがとうございます!」
優星に声をかけてあの人の噂を伝えたのに優星はあの人から離れる気配はなかった。
そして夏休みが明けて少しが経つと優星はあの人のことを避け始めていた。
避けているのにいつも優星の頭の中にはあの人がいる。
あぁ…優星は気づいてしまったんだ。
自分が綾野幸希のことを好きだということに。
私は何もできないの?
まだ私は何もしていないのに。
「あやの先輩!」
「来たね、優星」
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