全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「ここなんてどうかしら? 家を出た二番目のお兄様が使っていたお部屋! 模様替えをすれば使えると思うわ」
「何をおっしゃっているんですか……! ご子息様が使っていたお部屋を使用人が使うなんて聞いたことがありません」
「サイラスはただの使用人じゃなくて私の命の恩人なのよ。このくらいの待遇を受けて当然よ。むしろ、全然足りないくらいだわ」
「命の恩人ってなんですか。私はお嬢様にそこまでしていただくようなことをしていません……!」
サイラスは戸惑いきった顔で言う。
説明しようがなくて困ってしまった。サイラスは一度目の人生で私を助けてくれたけれど、この世界でそれを言ったってわかってもらえるはずがない。
けれど、何としてでも恩返ししなければ気が済まないのだ。
「お嬢様、本当に私は何もいりませんから。今受けている待遇で十分です。お気持ちだけ受け取っておきます」
サイラスは少しかがんで私の顔を覗き込むと、子供をあやすかのように言った。どうやらお部屋をあげる作戦も断念するしかないようだ。
その後も私は、欲しい物はないかと街の有名店から商人を呼んでみたり、私の部屋にある宝石や美術品などを持ってきてどれが欲しいか尋ねてみたりしたが、全て断られてしまった。
品物より現金のほうがいいのかと金貨を渡そうともしてみたが、それすらも拒否される。
「もう、なんで何も受け取ってくれないの!」
もうあげるものが思いつかなくなり、涙目になって叫んだ。早く恩返しがしたいのに。一体何なら喜んでくれるんだろう。
「お嬢様。私はお嬢様に尽くす立場の人間です。お嬢様に何か頂戴することなどできません」
「私があげたいと言っているのに?」
諭すように言われ、私は口を尖らせる。
「一体何なら受け取ってくれる? 私はサイラスに喜んで欲しいのよ」
「お心遣いは大変ありがたいのですが……」
サイラスはまた困った顔になる。それから、ふいに目を泳がせると、躊躇いがちに言った。
「では、一つお願いしてもよろしいでしょうか。ずっと夢見ていたことがあるのです」
「!! もちろんよ! 何なに?」
思わず身を乗りだして尋ねる。やっと要望を口に出してくれた。やっと恩返しができる!
「お嬢様と一緒に街へ行きたいのです。ついてきてくれますか?」
サイラスは恥ずかしそうにそう言った。あまりにも簡単な頼みに拍子抜けしてしまう。
「もちろんいいわよ。けど、そんなことでいいの?」
「はい。それが一番嬉しいんです」
「サイラスがいいならいいけど……」
腑に落ちないまま了承する。もっと贅沢を望んでくれればいいのに。
せっかく財力だけはある私が頼みを聞くと言っているのに、サイラスは欲がなさ過ぎる。
「ありがとうございます。楽しみにしてます」
サイラスはそう言うと、とても嬉しそうに笑った。巻き戻ってから見た中で一番幸せそうな笑顔。
その顔を見たら、腑に落ちないながらも、まぁいいか、と思ってしまった。
「何をおっしゃっているんですか……! ご子息様が使っていたお部屋を使用人が使うなんて聞いたことがありません」
「サイラスはただの使用人じゃなくて私の命の恩人なのよ。このくらいの待遇を受けて当然よ。むしろ、全然足りないくらいだわ」
「命の恩人ってなんですか。私はお嬢様にそこまでしていただくようなことをしていません……!」
サイラスは戸惑いきった顔で言う。
説明しようがなくて困ってしまった。サイラスは一度目の人生で私を助けてくれたけれど、この世界でそれを言ったってわかってもらえるはずがない。
けれど、何としてでも恩返ししなければ気が済まないのだ。
「お嬢様、本当に私は何もいりませんから。今受けている待遇で十分です。お気持ちだけ受け取っておきます」
サイラスは少しかがんで私の顔を覗き込むと、子供をあやすかのように言った。どうやらお部屋をあげる作戦も断念するしかないようだ。
その後も私は、欲しい物はないかと街の有名店から商人を呼んでみたり、私の部屋にある宝石や美術品などを持ってきてどれが欲しいか尋ねてみたりしたが、全て断られてしまった。
品物より現金のほうがいいのかと金貨を渡そうともしてみたが、それすらも拒否される。
「もう、なんで何も受け取ってくれないの!」
もうあげるものが思いつかなくなり、涙目になって叫んだ。早く恩返しがしたいのに。一体何なら喜んでくれるんだろう。
「お嬢様。私はお嬢様に尽くす立場の人間です。お嬢様に何か頂戴することなどできません」
「私があげたいと言っているのに?」
諭すように言われ、私は口を尖らせる。
「一体何なら受け取ってくれる? 私はサイラスに喜んで欲しいのよ」
「お心遣いは大変ありがたいのですが……」
サイラスはまた困った顔になる。それから、ふいに目を泳がせると、躊躇いがちに言った。
「では、一つお願いしてもよろしいでしょうか。ずっと夢見ていたことがあるのです」
「!! もちろんよ! 何なに?」
思わず身を乗りだして尋ねる。やっと要望を口に出してくれた。やっと恩返しができる!
「お嬢様と一緒に街へ行きたいのです。ついてきてくれますか?」
サイラスは恥ずかしそうにそう言った。あまりにも簡単な頼みに拍子抜けしてしまう。
「もちろんいいわよ。けど、そんなことでいいの?」
「はい。それが一番嬉しいんです」
「サイラスがいいならいいけど……」
腑に落ちないまま了承する。もっと贅沢を望んでくれればいいのに。
せっかく財力だけはある私が頼みを聞くと言っているのに、サイラスは欲がなさ過ぎる。
「ありがとうございます。楽しみにしてます」
サイラスはそう言うと、とても嬉しそうに笑った。巻き戻ってから見た中で一番幸せそうな笑顔。
その顔を見たら、腑に落ちないながらも、まぁいいか、と思ってしまった。