全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「じゃあ、あの時みたいにお店を見ながら歩きましょう!」

「いいですね、お嬢様」

 その後は、子供の頃を再現するみたいにめいいっぱいお祭りの終わりかけた街を歩いた。

 昼間散々お店を回ったはずなのに、夜の街は昼間とは違った楽しさがあって、随分遅くまで歩き通しだった。

 いつもはちゃんと決まり事を守らせようとするサイラスも、今日は止めようとせず、むしろあちらにも行ってみませんかなんて提案してくる。


 結局、その日お屋敷に戻ったのは、日付の変わった後だった。

 ジャレッド王子とカミリアを無視した上、こんなに遅くに帰ってきたのだから、当然怒られるのは覚悟していた。

 けれど意外にもお父様は何も文句を言わなかった。

「昨日は大騒ぎだったそうだな。あまり目立つことはするなよ」

 ただ一言、翌日の朝にそう言われただけ。

 後でわかったことだけど、昨日あの広場にいた人たちは、さすがにジャレッド王子とカミリアのやり方に疑問を持ったようだ。

 二人のやりようはどう見ても嫌がらせにしか見えず、私に同情が集まったらしい。

 お父様は娘が投獄されても放置するほど非情な人だけれど、自分の不利益にならないことに関しては口を出さない。

 今回の件も私を不憫に思って叱らなかったとかでは絶対にないと思うけれど、怒られなかったのは運がよかった。
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