全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
9.一度目の世界 サイラス視点②
リーシュの祭典の翌日、旦那様が休日をくださったため、使用人寮の自室でぼんやり過ごしていた。
頭にはまだ昨日の祭典の余韻が残っている。
昨日はせっかく同行を許してもらえたというのに、私はまたもお嬢様がジャレッド王子とカミリアに貶められるのを止められなかった。
あれほど無神経なことを言われたのに、お嬢様は怒るそぶりも見せないので余計に胸が痛くなる。
口ではジャレッド王子のことなど気にしていないと言っているが、本心ではきっと傷ついているはずだ。
挙げ句、祭典の最後の儀式ではカミリアがお嬢様を強引に舞台に上がらせようとするので、つい耐えきれなくなりお嬢様を抱き上げてその場から連れ出してしまった。
王子たちに逆らうような真似なんて、するべきではないことはよくわかっている。それでもお嬢様が貶められるのを黙って見ているのはもう我慢できなかったのだ。
勝手なことをした私にお嬢様は呆れることもなく、一緒に怒られましょうと言って笑いかけてくれた。
その後は、どうせもう問題を起こしてしまったのだからと、暗くなった街を寄り道しながら歩いた。
出店された店はほとんど閉まっていたけれど、ランプ飾りはついたままなので、どこも明るい。
お嬢様は最後までずっと楽しそうに笑っていた。