全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします

「お嬢様、少しよろしいですか？」

「……どうぞ」

　部屋のドアを叩くと生気のない声が返ってくる。

　扉を開けると、ナイトウェア姿のままベッドの上にいるお嬢様がぼんやりとこちらを見ていた。机の上には本が積み上がり、書きかけらしい便箋が散乱している。

　身支度や清掃を担当するメイドは来なかったのだろうかと顔をしかめる。

「お嬢様、もうお昼ですよ。まだ何も食べていないでしょう。ダイニングルームで食事を取られませんか」

「いらないわ。食欲がないの」

「では、以前お嬢様が気に入っていた焼き菓子を買ってきたので、こちらだけでも召し上がりませんか？」

　焼き菓子の入った包みを差し出しながら尋ねるが、お嬢様はふるふる首を横に振るだけだった。

「悪いけど、甘いものなんて口に入れる気分じゃないの」

　素っ気なくそう言われ、力なく包みを下ろす。

　ここ一週間、お嬢様は食欲がないと言うばかりでろくに食べ物を口にしていない。

　以前好きだと言っていた焼き菓子なら食べてくれるかと思い街まで買いに行ってみたが、これもだめなようだ。

　落ち込む気持ちを振り払い、笑顔を作って尋ねる。