全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「そういうのじゃないのよ。私はサイラスに幸せになって欲しいだけなの」
「まぁ、恥ずかしがらなくていいんですのよ。サイラス様といるときのエヴェリーナ様、とってもいきいきして幸せそうですわ」
「恥ずかしがっているわけじゃないんだけど……」
「そうですね、婚約者がいなくなってフリーになったとはいえ、公爵家のご令嬢が執事を愛してらっしゃるなんて気軽に言えることではありませんわね。失礼いたしました」
彼女はうんうんうなずきながら、勝手に一人で納得している。
「でも、エヴェリーナ様はともかく、サイラス様のほうはエヴェリーナ様をお好きだと思いますよ。ずっと前から」
「え?」
「だってサイラス様のエヴェリーナ様を見つめる目、本当に愛を感じますもの。何か進展があったら教えてくださいまし!」
そう言うと、エノーラは元気に去っていった。
(いい子なんだけど思い込みが激しいのよね、あの子)
私は息を吐いて、会場の中へ戻ることにする。エノーラの思い込みには困ったものだ。
しかし、そう思うのになぜだか妙に落ち着かなくて、顔が熱かった。エノーラがおかしなことを言うせいだ。