全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「私、あなたを幸せにしてあげたいの。それにあなたと一緒なら私も幸せになれる気がするの。だめかしら?」

「お嬢様……」

 サイラスは迷うように私を見て、それからおそるおそるといったように抱き寄せる。

「夢みたいです。お嬢様」

 涙声でそう言われ、なんだかとても嬉しくなった。


 私はもしかしたら、サイラスが自分を犠牲にしてまで助けてくれたと知ったあの日から、ずっとサイラスのことが好きだったのかもしれない。

 それに気づかなったのは、きっとあの時私の心を埋め尽くした後悔と罪悪感が、今でも心に残っていたから。

 一度目の人生でサイラスを死なせた私は、今回の人生では決して彼を縛るようなことはしたくなかった。サイラスには私の想いなんて気にせず、ただ自由に、幸せになって欲しかったのだ。

 見上げると、心底幸せそうにこちらを見つめるサイラスと視線が合う。

 私はもう感情に気づかないふりをしなくていいのだと思ったら、自然に笑みがこぼれた。
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