全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「サイラスは優しくて優秀でかっこよくて、ずっと私を見守っていてくれた人なんです。
つまらない男ですって? 殿下の自己紹介かと笑いそうになったわ。身分くらいしか取り柄がないあなたと違って、サイラスは世界一素敵な人なんだから」

 王子にはっきりそう言ってやった。私に腕をつかまれたままのサイラスは、顔を真っ赤にして何か言いたげに口をぱくぱくさせている。

「貴様……!」

 打たれた頬を右手で押さえながら、ジャレッド王子は怒りに顔を紅潮させる。それからそばに控えていた兵士に命じた。

「エヴェリーナを捕らえろ! カミリア暗殺未遂の罪に加え、王族に危害を加えた罪だ! 牢の最下層にでもぶち込んでおけ!!」

 王子の言葉にぎゅっと身体を固くする。しくじったかもしれない。いや、確実にしくじった。

 今回の人生では人を恨まずサイラスの幸せだけ考えて生きようと思ったのに。

 一体何をやっているのだろう。でも、サイラスを悪く言われた瞬間、何も考えられなくなってしまった。

 ふと顔を上げると、サイラスがかばうように私の前に立っていた。その大きな背中を見ると、こんな状況なのに安心してしまう。

 あぁ、もういいか。今回の人生ではやっていないとはいえ、私は一度カミリア暗殺を企てた身。罰せられるのも仕方ないのかもしれない。

 ただ、今回はサイラスが身代わりになることを防がないと。

 それだけはうまくいかせないと……。
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