全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「ミリウス様、そんなことをおっしゃらないでください。まだ王宮のパーティーでの件を怒ってらっしゃるのですか……?」

「いいや、神具の件はもう怒っていない。俺が愚かだっただけだ。今はエヴェリーナの件についてのみ話している」

「それならなおさらエヴェリーナ様を擁護するなんて納得がいきません。私は今までエヴェリーナ様に何度も意地悪をされてきたんです。
今回切りつけられたときも咄嗟にあの方の顔が浮かびました。少しは和解できたと思ったけれど、やはりエヴェリーナ様は本心では私を憎んでいたのだと……」

 カミリアは目に涙を浮かべながら震える声でそう告げる。いかにも弱々しく儚げな姿だった。しかし、ミリウスは彼女をちらりと見遣るだけでジャレッド王子の方に視線を戻してしまう。

「俺にはそう思えません。エヴェリーナは、兄上にもカミリアにももう興味がないように見えます」

「そんなはずはない。あの女は嫉妬深くて陰湿な悪女だ。お前、パーティーの件を怒っていないと言うが本当はまだ根に持っているのだろう? だからあの場でお前に有利な証言をしたエヴェリーナの肩を持つのだ。おめでたいことだな」

 ジャレッド王子はミリウスに蔑みの目を向けた。しかし、ミリウスは怒ることもなく冷静な声で言う。

「確かにその件では彼女に感謝しています。しかし、だから彼女の側につくわけではありません。最近の彼女を見ていて、嫉妬で兄上やカミリアに害をなすようにはとても見えないから言っているのです」

「なんの根拠があってそんなことを……」

「先日、私はとあるレストランでエヴェリーナと執事に会いました。王宮でパーティーが行われる以前のことです」

 ミリウスは王子の言葉を遮って言った。
 
 唐突な言葉に、ジャレッド王子は怪訝な顔でミリウスを見る。
< 173 / 197 >

この作品をシェア

pagetop