全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします

「そのとき、兄上とカミリアに言及した私に向かって、エヴェリーナはもう気にしないことにした、お二人が仲睦まじく過ごされるのはいいことだと言いました。
正直、驚きました。あの時は、私も彼女は兄上たちを恨んでいるとばかり思っていたので」

「ふん、口先だけなら何とでも言えるだろう」

「私はその日、無礼にも彼女に水を浴びせかけたんです」

 ミリウスはそうはっきりと言う。

 ジャレッド王子は目を丸くしていた。会場が小さくざわめき始める。

「は? 何の話だ」

「しかしそこまでされてもエヴェリーナは笑みを崩しませんでした。私に向かって笑顔を向け、もう自分を哀れむのはやめたのだと言ったのです。離れていった者よりも、変わらぬ態度で接してくれる者を大切にしたいと。
兄上は、これらの言葉がすべて取り繕うために出たものだと思いますか?」

 ミリウスに真っ直ぐに見つめられ、ジャレッド王子は言葉に窮していた。

 ミリウスはそんな王子から、こちらに向かって視線を移す。そして謝罪の言葉を口にした。

「エヴェリーナ、その、あの時はすまなかった。それにあんな無礼なことをした俺に手を差し伸べてくれたこと、感謝している。……さっきはそれを言いたかったんだ」

 会場がいっそうざわめいた。人々の会話が途切れ途切れに聞こえてくる。
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