全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
***

 こうして無事王宮から帰ってこられた私たちだが、大変だったのはその後だった。

「エヴェリーナ、調子はどうだ? たまには親子で茶でも飲みながら話さないか。いい茶葉が手に入ったんだ」

「はぁ……。今日はサイラスとお茶をする約束ですので、遠慮しておきますわ。お父様」

「そうか、それは残念だ。しかし、使用人との交流を深めるのも大切なことだな。その調子でがんばれよ」

「え、ええ……」

 王宮に呼びだされた翌日から、お父様の態度がすっかり変わっていた。
 
 なんでも王宮の騒動でのミリウスの発言がきっかけで、人々の間では私のことが大変好意的に受け入れられているらしいのだ。

 彼らの中で私は、「冤罪をかけられても腐らずに愛を貫いた令嬢」だということになっているらしい。

 それまでも主にご令嬢たちを中心に広まっていた私とサイラスを応援する声は、あの騒動がきっかけでますます加速した。今ではどこへ行くにも、いかにも見守っていますみたいな視線を送られる。


 それともう一つ。お父様の態度が変わったのは、王子のミリウスが頻繁に我が家へ訪れるようになったことも大きいだろう。

 ミリウスの態度はこれまでと正反対になり、しょっちゅうアメル邸へやって来ては手紙やプレゼントを置いていくようになった。

 友好的になったのは嬉しいけれど、なんだか戸惑いの方が大きい。

 サイラスはミリウスが来るときは必ず私の後ろに控えて離れようとしなかった。

 もしかすると、過去の態度から彼がまた私に危害を加えないかと心配しているのかもしれない。

 今のミリウスは私のことをそんなに嫌ってないだろうし心配しなくても大丈夫だと言ってみたら、サイラスは何か言いたげに私を見た後、「余計に二人にできません」ときっぱり告げた。

 なぜだか尋ねても、答えは教えてくれなかった。
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