全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「サイラス……?」
「すみません。お嬢様にそんな顔をさせるつもりはなかったんです」
私をぎゅっと抱きしめたサイラスは、苦しげな声で言う。
「ただ、私の身勝手な願いでお嬢様の未来を狭めてしまうことが怖くて」
「そんなこと……」
「そう思ってもお嬢様に新しい縁談が来るたびに苦しくなりました。お嬢様を誰にも渡したくないと、身の程知らずにも思ってしまったんです」
思わずえ? と顔を上げる。サイラスは断ろうとしているのではないのか。密着した彼の胸からは、早くなった心臓の音が聞こえてくる。
サイラスは体を少し離して私の肩をつかむと、覚悟を決めたように言った。
「お嬢様、私と結婚してくれますか?」
前に聞いたのと同じ言葉。けれど今度は、そこに試すような響きはなかった。サイラスはただ真剣に、真っ直ぐ私を見ている。
私は迷わずうなずいた。
「ええ、もちろん! 喜んで!」
そう答えたら、真剣な顔でこちらを見ていたサイラスの顔がふっと緩んだ。サイラスは柔らかな眼差しで私を見る。
「お嬢様……」
「サイラス、私が絶対に幸せにしてあげるからね!」
「ありがとうございま……、あの、普通逆ではありませんか……? 私がお嬢様を幸せにしたいです」
「そう? それなら私たちお互いを幸せにしましょう! よろしく頼むわね」
そう言ったらサイラスがおかしそうに笑った。
「お任せください、お嬢様」
なんだか胸がうずいて、自然に顔がにやけてしまう。ジャレッド王子との婚約が決まったときよりもずっと嬉しいのはどうしてかしら。
その時初めて、私が本当に欲しかったのはこんな未来だったのだと気がついた。
私の欲しかったものは、本当はすぐ隣にあったのだ。
終わり
「すみません。お嬢様にそんな顔をさせるつもりはなかったんです」
私をぎゅっと抱きしめたサイラスは、苦しげな声で言う。
「ただ、私の身勝手な願いでお嬢様の未来を狭めてしまうことが怖くて」
「そんなこと……」
「そう思ってもお嬢様に新しい縁談が来るたびに苦しくなりました。お嬢様を誰にも渡したくないと、身の程知らずにも思ってしまったんです」
思わずえ? と顔を上げる。サイラスは断ろうとしているのではないのか。密着した彼の胸からは、早くなった心臓の音が聞こえてくる。
サイラスは体を少し離して私の肩をつかむと、覚悟を決めたように言った。
「お嬢様、私と結婚してくれますか?」
前に聞いたのと同じ言葉。けれど今度は、そこに試すような響きはなかった。サイラスはただ真剣に、真っ直ぐ私を見ている。
私は迷わずうなずいた。
「ええ、もちろん! 喜んで!」
そう答えたら、真剣な顔でこちらを見ていたサイラスの顔がふっと緩んだ。サイラスは柔らかな眼差しで私を見る。
「お嬢様……」
「サイラス、私が絶対に幸せにしてあげるからね!」
「ありがとうございま……、あの、普通逆ではありませんか……? 私がお嬢様を幸せにしたいです」
「そう? それなら私たちお互いを幸せにしましょう! よろしく頼むわね」
そう言ったらサイラスがおかしそうに笑った。
「お任せください、お嬢様」
なんだか胸がうずいて、自然に顔がにやけてしまう。ジャレッド王子との婚約が決まったときよりもずっと嬉しいのはどうしてかしら。
その時初めて、私が本当に欲しかったのはこんな未来だったのだと気がついた。
私の欲しかったものは、本当はすぐ隣にあったのだ。
終わり