全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
それからも私は上手なドラゴンを縫えるように、時間があれば刺繍をし続けた。
ジャレッド様の婚約者になってから、今までは多少サボっても大目に見てくれていた家庭教師たちが急に厳しくなったので、刺繍をできる時間は勉強の合間の休憩時間と寝る前の時間に限られている。
それでもなんとか続けるうちに、ようやくドラゴンの刺繍が出来上がった。
「やったわ! ジャレッド様、喜んでくれるかしら」
私はやっとできた刺繍入りのハンカチを両手で広げて眺める。
すごい、結構うまくできたんじゃないかしら。元の絵と同じとまではいかないけれど、ちゃんとドラゴンの形をしている。
私は嬉しくなって、ハンカチをぎゅっと胸に抱いた。早くジャレッド様に渡したい。
***
「あの、ジャレッド様! 私、今日はプレゼントを持って来たんです」
それから数日後、王宮に呼ばれてジャレッド様と二人でお茶をする機会があったので、私は早速ハンカチを渡すことにした。
どきどきしながらハンカチの入った包みを差し出す。
「プレゼント? 何かな」
ジャレッド様は包みを受け取ると、にこやかに尋ねる。
「開けてみてください」
「これは……」
ジャレッド様は包みを開けると、中から出てきたハンカチをじっと見つめた。一瞬、その顔に蔑みのようなものが浮かんだ気がした。